「暗闇の肖像画」





彼はとある農地の地主だった





彼は完璧主義だったので、細かい法を作り、それを守らない労働者にはようしゃなく罰を与えた





生きているうちに欲しいもののほとんどを手に入れた彼は

生きた証がほしかったのか、死ぬ前に肖像画を完成させようとした





彼は完璧主義だったので、普通の鏡ではなく、三面鏡を使って肖像画を書きはじめた





しかし

考えていくうちに

三面鏡ではない普通の鏡に映る自分の方が本物なのかもしれないと思い始め、大いに時間を無駄にした

あまり時間はないというのに





結局

自分が見ている自分は内面で、他人が見ている自分は外見なので、真実の外見は他人が決めるもの

という結論に行き着いたので、三面鏡で肖像画を描く事にした





彼はドンドン筆をすべらせていく





ドンドンドンドン何かにとりつかれたように

ドンドンドンドン筆をすべらせていく





そして、目の部分にさしかかった時に異変が起こった

どうしてもうまく描けない

何度やりなおしてもうまく描けない





完璧主義だった彼は何度もやりなおした





何度も何度も

何度も何度も





それでも描けなかったので、目の部分だけ後回しにして他から完成させた





他は順調にいった

ドンドンドンドン描けた

目の部分以外が完成している肖像画が出来上がった

完璧主義な彼は、また目の部分を何度も何度も描き直した





何度も何度も

何度も何度も

それでも目の部分だけはうまくかけなかった





彼はひらめいた

『そうだ!描き易い目にしよう!』





彼は両目を潰した





目の部分を描きやすくするために両目を潰した

彼の画は完成し、彼は死んでいった





とても満足して死んでいった





その後

その肖像画をみた労働者達は、嘲り笑った





肖像画の目が開いていたからだ

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