「ヌイグルミ」




僕はイモウトが大好きだった

大好きで大好きで仕方がないのに、僕にそれを伝える術はない

僕は口が上手くないからだ

どうやってこの『好き』を伝えたらいいものが見当もつかない

大好きなイモウト

大好きなイモウト





イモウトには友達が沢山いて

僕にはいない

僕にないもの

イモウトにあるもの





明るいイモウト

暗い僕





イモウトは今僕の肩掛けカバンの中にいる

いつも一緒だ

誰よりも近く、そして先に遠くへ

もうすぐ僕も行く、イモウトのそばへ

その事は誰も知らない

ここの先生も、道行く人達も、人間と戦っているクマもその人間も

僕の肩掛けカバンの中を誰も知らない





あまり話さないからイモウトは知らない

僕がこんなに好きだという事を





僕が手を上げると反応してくれる





話しかけても声は届かないけど

手を出すと届く

イモウト

手を出すと僕の想いが届く

イモウトは反応してくれる

会話





好きになって欲しかった

僕の事を

だから僕は会話をする

イモウトと会話する






そして一緒に行くんだ






僕の肩掛けカバンに

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